狩猟鳥獣
狩猟教本によると日本国内における鳥獣の種類は
- 鳥類・・・約550種
- 獣類・・・約80種(モグラ・ネズミ類、海生哺乳類を含む場合は約160種)
と記載されており、この中でも狩猟可能な鳥獣は
- 鳥類・・・28種(令和4年よりゴイサギ・バン指定解除により26種)
- 獣類・・・20種
へ絞られる。
何を以て狩猟の対象となるのか気になっていると、
その理由も教本の続きにに記載されていた。
- 資源性(肉または毛皮の利用など)
- 害性(生活環境や農林水産業または生態系に対する程度)
- 個体数調整
等といった理由が挙げられるとの事だった。
「(少なっ)」
それが素直な感想だ。
ただでさえ最も興味のある鹿や猪等の獣類は20種しかいないのに、その中に熊やリスまでいる。
危険極まりない熊には絶対に遭遇したくないし、リスなんて可食部などほんの僅かな物だろう。
野山を飛び駆け回る動物を狩ろうというのだから安定供給などはまるで望めないが、
少しでも
【自ら仕留めた獲物を食べて暮らしてみたい】
という目的を達成するためには、様々な条件をクリアする必要がある事がすぐ分かった。
そしてこれは鳥類にも同じ事が言えるのだが、
少ないとはいえ狩猟可能な獣類20種の中には厄介な問題があった。
見た目が非常に似ているものの、獲って良い種類とダメな種類の判別が必要な組があったのだ。
例えば、
狩猟可能・・タイワンリス、シマリス(亜種のチョウセンシマリスを含む)
狩猟不可・・ニホンリス、ムササビ、モモンガ
といった具合に。
「(新人が現場で判断できるのか?)」
そう思っていると講師は淡々と言った。
「完璧に覚えて下さい」
・・・20種で良かった。
非狩猟鳥獣の保護
獲ってはいけない鳥獣が罠に掛かった場合、当然だが逃がさなければならない。
そのため、罠は獲物が掛かっても即座に命を奪ってしまう事のないような仕組みになっている。
罠は専門会社から購入可能だが自作も可能。
その場合は必ず定められたルールに則った製造が必要となる。
昔は狩猟非狩猟を問わず獲物を一網打尽にする罠もあったそうだ(現在は完全に禁止されている)。
先人達の狩猟技術が廃れていく現状を嘆くニュースをたまに見る事があるが、
禁止された理由が
「違法な猟が後を絶たなかった為」
としっかりと教本に書かれているあたり、
そういった影の部分もそれはそれであって、
自然保護のために国が法律をその都度改めてきたのだろう。
絶滅に瀕する程に乱獲してはならない。
かといって人の暮らしを脅かす程に増えて貰っては我々の生活が脅かされる。
難しい舵取りがなされた上で現在の法や条例があり、また今後も変化していくと思われた。
狩猟。
単に楽しんで行える物ではないようだ・・
そんな風に感じた事を覚えている。
罠の設置体験
一日の座学の最後に、本物の罠を用いた設置講習が行われた(架設と言う)。
触って良いなんて感動だ。
『試験中に油断してヘマをして落ちちゃいました』
なんて事が絶対にないようにスマホで動画に納める。
他の参加者の方々も一度に覚えられる物ではない事を察知し、同様に撮影していた。
怪我の無いよう、作動の仕組みを理解し注意点を肌身で感じる事は勿論重要なのだが、
そのような作業手順よりも遥かに大事なのは仮試験官への報告だった。
「今から罠を設置します。」
「罠、設置完了しました。」
「罠の解除を行います。」
必ず、必ず報告するようにと講師から伝えられた。
当時は「(面倒だな・・)」と思っていたものだが、
そのような一つ一つの報告こそが何よりも身の安全を保障する事が、実際に山に入って良く分かる。
本当に単独で罠猟を行うなら、悪く言えば何をしても誰にも見られる事はない。
それが油断に、引いては重大な事故に繋がる。
現在使っている罠は師匠から貸して頂いている物だ。
何年もかけて試行錯誤をを繰り返し出来上がった、
講習で使った一般的な形状・構造とはかなり異なる世界で唯一無二の物。
それでも講師達のあのしつこいまでの報告に関する指導はいつだって活かされている。
師匠の罠の使い方を完璧に理解し、そして使いこなせる様になる迄はまだ時間はかかりそうだ。
ただ、安全こそが重要である事を講習で教えて頂いた事に今も感謝している。
いつか市販の罠を使うその日が来たのなら、学んだ事を全て活かして使ってみたいと思う。
あっという間に講習が終わった。
楽しい時間ではあったものの、丸1日集中し続けたので体力を使い果たしてしまった。
帰りは行きより多く休憩を取って帰る。
少し前まで過労によりボロボロになっていた体。
少し前まで何をしても大して楽しめない。
そんな日々だったのにまるで生活が一変した。
スローペースではあるものの体は回復傾向で順調。
ただ完治というまではどう考えてもまだ遠いから、もう少し自分が楽しめる時間を確保しよう。
急いだらまた同じ事を繰り返す。
今は少しでも楽しいと思える事をしよう。
生きている時間の内、そっちの時間と質を高めていきたい。
横になりながら撮影した動画を何度も何度も繰り返し眺め、全ての手順を覚えた。
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