【読書】ぼくは猟師になった

読書
ぼくも猟師になった

自然と生きる 自然に生きる

そんな生き方を示してくれる本。
インターネットで偶然見つけて即購入した。著者は千松信也さん。
子供の頃にワクワクしながら漫画やアニメに接していたような感覚で未だに読み返す。
結構ボロボロになったが、なぜかそれが少し誇らしい。

- 僕が猟師になりたいと漠然と思っていた頃、「実際に猟師になれるんだ」
と思わせてくれるような本があれば、どれほどありがたかったか。 - まえがき冒頭より

著者の思いのお陰もあって、自分もこの世界に進む勇気を貰って毎年狩猟をしていられる。
生い立ち、学生時代、狩猟への興味、罠猟師としての日々・・
山賊ダイアリーの著者である岡本健太郎さんと同様に、
春は山菜を採り夏は渓流釣りを楽しむ等、年中身の回りの命と触れ合い日々を暮らしておられる。
自分は網猟による鳥類の捕獲はしていないが、
古くから伝えられてきた合理性の極みのような鴨の仕留め方を知った時は本当に驚いた。

本にも記載されているのだが、狩猟技術に関する書籍は探せばそれなりにあるものの、
良い意味でどこか異世界の住人のような印象を持つ物が多かった様に思う。
学生の頃に狩猟免許を取得し一年目から単独でシカを仕留めたその経歴は凄まじいが、
上記のようなプロ向け?の本とは異なり、
狩猟をせずとも子供の頃に魚釣りや昆虫採集に夢中になった自分に親近感を抱かせてくれたのだ。

共感の所在①

何が自分にとって著者に親近感を感じるかと言えば、物事を判断する際のバランス感覚だ。

見世物として扱われて最後には命を落とした動物園のゾウ。
商業捕鯨禁止すべしと主張する動物愛護団体。
学生時代からそういった物に怒りの感情を抱きつつ、
自身は自身で飼っていたペットの命を深く顧みる事がなかった点が素直に書いてある。

何か一つのみを妄信せずに、様々な視点で物事を捉えようとするその感覚に何度も自分を重ねた。
著者から伝わる。自分は自分が思うような自然体の暮らしがしたいと。
それは自分も良く感じて来たし、色々な事象をどうにか納得して生きる為に今もずっと考え続ける。
その納得の為には、自ら自然の中に立入り自然の中にいる生命に直接触れなければならなかった。
自ら獲物を獲る術を、自ら獲物を肉にする術を学びたかったし学ばなければならなかった。

そういった事をいちいち考えないと暮らしていけない厄介な性格だと長年思って来たが、
自分に限らず、生きていく上で経験した方が良い人が意外とおられるのではないかと最近思う。
命を奪わなければ自らの命が絶対に続く事はないのだという経験を。

共感の所在②

更にどこに著者に親近感を感じるかと言えば、肉を食べる事への興味だ。

ずっと気になっていた。
お金を払えばすぐ手に入るスーパーに並ぶ肉は、どうやってこの形になっているのか?
著者も似たような感覚をお持ちだったようだ。

- スーパーでパック詰めの肉が売られているのを当然と思い、その肉にかけられた労力を
想像しなくなっている状況はおかしいと思います。誰かが育て、誰かがその命を奪い、
解体して肉にしているのです。狩猟は残酷だと言う人がよくいますが、
その動物に思いをはせず、お金だけ払い買って食べる事も、僕からしたら残酷だと思います。-

狩猟は残酷だと言う意見に対する反論。
個人的には、過去の自分がそうだったように
『単に学ぶ機会がなかっただけ』
という感想を持つのだが、一つの意見としてとても良く分かる。

本当に全くそのままのセリフを自分も何度も言われた事がある。
「どうしてあなたはそんな酷い事ができるの?かわいそうだと思わないの?」
そのセリフを発した方と目の前でベーコンを焼いている最中に。
肉は肉としての形を成す前に一つの命があった事を感じる事無く育ってしまえば、
当然そういった意見が出てくるに決まっている。
即座に言い返したくなったが、ベーコンが命あった物だと認識できないのだろうと感じた。
わからないのだ。
目の前の肉が、元々は四本の脚で間違いなく動いていた生命だという事を。

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)
世の中に知れ渡っているこの単語。
そのお洒落でカラフルなデザインからは、命を奪い生きていく事の意味は感じ辛いのではないか。
SDGsという単語が出来る遥か昔から伝えられてきた文化の方が、余程学びがあるのではないか。

そう思いながら今も狩猟を続けている。

生活そのものを支える獣達

著者は山で仕留めた獲物を最大限利用して生活しておられる。
肉はそのまま食べるだけでなく塩蔵による保存食にする。
友人に請われれば内臓を譲る。
皮はなめして小物入れにする。

無限ではない普段の生活。
その中でなんとかして自ら仕留めた獲物に敬意を払い生きている姿が本書から伝わってくる。
それが著者の自然体。

- 本書を読んで、少しでも現代の猟師の生身の考えや普段の生活の一端を感じていただけたら
ありがたいです。そして、僕より若い世代の人たちが狩猟に興味を持つきっかけになれば、
これ以上うれしいことはありません。 - まえがき末尾より

よくあるフレーズだけに一層響く。
著者が先人から学び伝えた事を、今、自分が僅かながら受け継いで、また来る猟期を待っている。

安心・安全でヘルシーなお肉を、年中無休で365日お届け【ミートガイ】

読書
スポンサーリンク
エセ神戸は小食です意外ですねでもSNSは食い物ばかりアップしています。

コメント