鹿はジビエとして優秀か②

料理
メキ鹿ンタコス

優秀な栄養価

鹿の栄養価がいかに優れているかについては以前記事にした。
異常と言っても差し支えない位の脂質・カロリーの低さ。
タンパク質や鉄分(食べ過ぎ注意な位)だけでなく、疲労回復に関わるビタミンB群も非常に優秀だ。

ボディビルディングやフィジークは当然、
あらゆるアスリートの体づくりのためにも、
ダイエットや健康維持・増進にも適している。

だが、それだけ優秀な鹿肉は有効活用されているとは言い難い。
狩猟や獣害駆除で捕獲された鹿。
その内の実に9割が、
焼却や埋設の憂き目に遭っている。
できる事ならただ処分されるだけの命を少しでも減らしたい。

しかし、
『命をありがたく頂く』
という感謝の精神だけでは、
世の中で中々消費されていかない事は現状を見れば明らか。
言い分としては綺麗で正しいと思うが、
世の中を動かす仕組みの1つとしては不足なのだろう。
その精神性を強く皆が持ち続けていられたのなら、
9割処分なんて現状はとうの昔に変わっている筈だ。

ジビエ肉として、
つまり食用として販売するには、
国が許可した解体処理施設が必要になる。
ジビエ肉はただでさえ安定供給ができないので、畜肉より遥かにコストがかかる。
かさんだコストは、
消費者が購入する際の価格に反映される。

スーパーで安価で手に入り、
常に安定した品質でクセがなく、
誰が調理してもブレのない畜肉を世の人々が選ぶのは当然だ。
そもそも鹿や猪では食用として不満があるから、
猪は改良され続け豚になったのだから。
その後も改良され続けてきたのだから。

しかし1人の鹿肉好きとして思う。
流石に9割処分はないだろう。
様々な面でもっと利活用されて欲しい。
鹿は食肉として、
本当に優れていて美味しいのだから。

鹿ポナータ

DHAとEPA

糖質・タンパク質に並ぶ3大栄養素である脂肪酸。
その中に、体内で合成できない多価不飽和脂肪酸という物がある。
更にその中に、青魚の脂に含まれる健康成分として有名な、
オメガ3(n-3系)と言われるDHAとEPAがある。

大塚製薬によると、
DHAとEPAを摂取する事で得られるメリットは
・免疫反応の調整
・脂肪燃焼の促進
・血管と血液の働き強化
・アレルギー疾患
・動脈硬化
・脂質異常症
・脳卒中
・皮膚炎の予防と改善
と多岐に渡る。

魚で有名なこの2つの栄養成分を、鹿肉は大量に含んでいる。

脂肪酸

そんなメリット豊富なDHA。
30~49歳の1日の摂取目安量は
男性2.0g
女性1.6g(授乳婦1.8g)
(DHA・EPA・DPA・α-リノレン酸の総量)
とされている。
サントリーのサイトを見てみると、
油脂類・野菜類にはDHA・EPA共に0mg。
肉類トップの豚肉でもDHAが67mgと表示されている。
それが鹿肉では、
100gあたり500mgと鹿肉が圧倒的だ。
なんだこいつ。
凄すぎて逆に怖い。

DHA・EPAだけを見れば、
青魚なら1尾2尾摂取すれば良いようだが、
サバやサンマは1尾あたり200~300キロカロリー。
DHA・EPAは脂なので、
摂取し過ぎると高カロリーとなる。
鹿肉は100gで119キロカロリー。
カロリー面でも健康的だ。

そして、更に重要な記事を見つけた。

アレルギーなど炎症性疾患の予防という観点からは、
上記のオメガ3(n-3系)脂肪酸と、
LDL(悪玉)コレステロールを下げるオメガ6(n-6系)とのバランスが大事らしい。
(日本脂質栄養学会)
これをn-6/n-3比と言う。

推奨されるn-6/n-3比は4未満。
この比率が牛肉なら38.00、豚肉なら19.67であるのに対し、
鹿肉は3.08と滅茶苦茶低い。
なんだこいつ。
凄すぎて逆に怖い。

『いかに美味しいジビエ料理にするか?』
そればかりを考えていた期間が長かった。
鹿を食べているだけで、
自身の健康に多大なる貢献をしてくれていた事を知った時は本当に感謝した。

カルニチン

アミノ酸の一種であるカルニチン。
鹿肉にはアセチルカルニチンという成分が多く含まれる。
厚生労働省によると、
一日の推奨摂取量は定められていない。
農林水産省によると体内合成可能。
だが、加齢に伴い生合成量が減少するので、
食事からの摂取が望ましいとされる。

・脳機能向上
・ストレス軽減
・疲労回復
・脂肪燃焼
・筋肉を動かす

と、
これまた良い事づくめの効果を持つカルニチン。
鹿肉様はこの栄養成分を豊富にお持ちだ。

胃や腸で消化された脂肪を燃やし、
エネルギーに変換させる機能が脂肪燃焼に貢献する。
また、
体内の臓器が働くためのエネルギーを供給してくれる。

中部大学の資料からは100gあたり80mg強と、
和牛と同程度含まれている事が分かる。
一日の摂取上限が1000mgという情報も見つけたが、
鹿肉を1kg食べても届かない。

鹿・・なんて優秀な食材なんだ!!!
体感的には脳機能が向上した気もストレスが減った気もしないのが残念でならない。
きっととんでもないバカで、
とんでもない激務なのだろう。
逆を言えば、
食べていなかったらとっくに健康を損なっていたのかも知れない。

バランス

鹿肉は健康面で特に優れている一方、弱点もある。
食用としての汎用性が猪程には高くない。
人が好む脂肪の量というものは千差万別とはいえ、
やはり脂身を欲するのが人の性。
鹿はあまりにそれが少ない。

焼肉・カツ・香辛料を効かせたケバブ。
どれも作ってみて美味しかったが、
脂の豊富な猪ほどは料理のレパートリーを広げ辛かった。

だが健康効果を見てみると、
こんなに素晴らしい肉もそうそう見つからないと感じる。

『メタボリックシンドロームと診断された・・
ダイエットはするけれどたまには肉を食べたい。』
とか、
『筋トレ中だけど鶏のササミやブロッコリーには飽きてきた。』
とか、
色んな場面で鹿肉が活躍できる場はもっとある。
鹿肉が人間にとってどれだけ健康に資する食材であるかが、
美味しく頂く手段と共にもっともっと世の中に広まって欲しい。

牛や豚が死ぬ様を想いながら命に感謝し、
神妙な面持ちでハンバーガーや豚骨ラーメンを食べる人なんて、世の中にごく僅かしかいないだろう。
ただうまいと思いながら食べるのが普通だ。
それがジビエとなるとなぜか、
『お命を頂戴いたしますとにかく感謝していただきます』
といった方向に一気に振れる事が多いと感じる。

鹿や猪だって、家畜と同じようにただ純粋に楽しく食べて良いのではないか。
喜び以外に何も感じなくて良いという訳ではない。
頂きますの精神は大事だ。

けれど、命を奪った責任感や罪悪感を殊更訴え続ける事が、ジビエの消費に繋がるとは思えない。
ポジティブに食べる事でジビエに対するハードルが下がり、
燃やされ埋められるだけの野山の動物が結果的に減るというルートはないのだろうかといつも考える。
食も考え方も。
何だってバランスが一番大事だ。
これからも考えていきたい。

しかしそれにしても・・
年中鹿肉を食べていて自分が馬鹿な理由が分からない。
逆を言えば、
食べていなかったらもっと酷かったのかも知れない。

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エセ神戸は小食です意外ですねでもSNSは食い物ばかりアップしています。

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